中国からの手紙

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節目の10回目となる中国遠征は初めて北京となった。経済力でも軍事力でもあらゆる面において、今や世界でも有数の大国となった中国。その中国の首都北京で初めて新極真会の選手権大会が開催された。大会会場で「北京・奥村道場」をはじめ上海、鄭州、南京、蘭州等々の「奥村道場の旗」が居並ぶ光景を見た時、拳を握り締めてしばし立ち尽くした。もう言葉にはならないほどの感動で武者震いさえした。14年前裸一貫で中国に渡り苦労に苦労を重ね、先ず上海の地に新極真空手の種を蒔いた。それが今や少林寺で有名な河南省の鄭州、南京、蘭州、湖南、そして首都北京にまで広がった。14年の時を経て見事な花を咲かせた。啓治の武道魂が途絶えることなく、いや勢いを増して根付いている事に感動した。日本の空手道の力の凄さをあらためて思い知ることが出来た。そして何より師である啓治の名前を冠に付けて、これでもかと言う位に“奥村道場!”の旗が何本も掲げられている光景を見た時、中国支部道場生達の思いを目の当たりにして心で泣けてしようがなかった。

勿論大会は大成功に終わった。極真他派閥の選手や新極真会ロシア支部からも強豪選手が参戦した。孫師範代と交流の深いローマン・ネステレンコ支部長も駆け付けてくれ、大会に花を添えてくれた。ローマン支部長は現役時代、何度も日本選手団の前に立ちはだかった世界最強外国人選手の一人だった。実は今回で7回目となる全中国大会を開催した北京道場の金先生は昨年の暮れに新極真会に移籍して来たばかりである。昨年10月の上海で行った第6回大会の時は他流派として参戦していた。その年の7月に中国支部がローマン支部長を北京に招いてセミナーを開催した。その時に金先生が参加していて孫師範代と知り合い、それから流派の垣根を超えた交流が始まった。勿論、新極真会(WKO)のことも、緑代表のことも知っていた。

今思えば、大会後の打ち上げパーティーで“新極真会で一緒にやりませんか!”と話をしたのが丁度1年前であるから驚くばかりである。今年の3月の上海遠征の時、金先生は昇段審査を受けたのである。北京から何度も上海の孫師範代の道場に出稽古に赴き、新極真の型も立派に習得していた。譬え他流派の何段を持っていようが、昇段審査の日まで新極真会の白帯を締めていたのは言うまでもない。

縁とは、こういうものかもしれない。小さな出会いが幾つも重なり、偶然が偶然でなくなり。そして大きな縁!固い絆!となって行くのである。

孫師範代とローマン支部長が出会った。そのローマン支部長のセミナーが縁で孫師範代と金先生が出会った。そして自分と出会った。自分は新極真会のありのままの姿を語っただけである。ただ敢えて一つだけ言うならば、“世界!”を強調した。世界中に広がる新極真空手の素晴らしさを。フルコンタクト空手界をリードする緑代表の話を。新極真会が世界一の組織であることを。その舞台で貴方の指導している道場生を立たせてやって下さいと熱く語った。一度、日本に来て世界大会を見て下さいと心から語った。

自分と孫師範代の魂の言葉が金先生の魂に響いた。

12月に100人以上の道場生全員を連れて移籍して来た。今年の8月には道場生や父兄を連れて福岡大会にやって来た。選手は20名出場した。行動が早かった。凄い!福岡で緑代表と師となる啓治と初めて会った。涙する道場生もおり、大感動の対面となった。

“出会いは奇跡を起こす!”縁を生かすも殺すも、それは自分次第である。

今回の北京遠征、実はもう一つ大感動の再会があった。

金先生の道場生の中に台湾出身の双子の兄弟がいた。昨年10月の全中国大会の時、小学6年生の部で兄弟で決勝戦を戦った。新極真会の選手より強かった。大会後の打ち上げパーティーで自分をもてなすために兄弟で漫才をしてくれた。啓治の元弟子で台湾支部長になった池田君と「もし台湾に帰った時は、新極真会に入門しないかなあ!」と話していたものである。それが1年で現実となった。双子同士の縁で赤い糸で結ばれていたのかもしれない(笑)。今年8月の福岡大会も出場した。今回の全中国大会の打ち上げパーティーの会場で二人の兄弟が自分の席にやって来た。通訳の方からこう言われた。

『二人が師範にお渡ししたいものがあるそうです。』

二人から渡されたのは『奥村啓治 師範』と宛名書きされた一通の手紙だった。謝謝!と御礼を言って握手した。通訳の人に3人の写真を撮って貰った。(その写真が手元にないのが残念である)まだ中学生の幼い二人が、たった一度しか会ったことのない空手の師範に、いまだ病と闘う日本の師範に宛てた手紙である。内容は聞かずとも、読まずとも分かる。大会会場で奥村道場の旗を見た時と同じように、いやそれ以上に感動した。心で泣けてしようがなかった。お互いが双子だという偶然はあるにはあったが、それ以上に初対面の時から感じ合うものが実は有った。13才!我が家の3番目の御姫様と同じ年だった(笑)。まだ名前すら憶えていないこの双子の兄弟。いつの日か、全日本の舞台に立たせてやりたい。いつの日か、中国代表として世界の舞台に立つ日が来ることを・・・願わずにはいられなかった。いや違う。中国支部長代理である自分の手で世界の舞台に立たせてやる!と誓った遠征になった。

帰国後、封印されていない「中国からの手紙!」を読んだ?・・・見た?漢字だけだった。漢字は読めなかったが、感じは掴めた(笑)。

北京道場の双子の兄弟と再会した8月の福岡大会で、地元の後輩から啓治が上海道場責任者に就任した時の壮行会を兼ねた就任披露の祝賀会のDVDを偶然にも貰った。北京遠征と陽孝の優勝祝賀会の直前だっただけに、この偶然に驚いた。啓治は最後の挨拶で、緑代表との出会い!緑代表から一番教わったもの!それは「世界!」であると語った。自分が1年前に金先生と会い、新極真会に誘った時に掛けた言葉も「世界!」だった。自分が一度は空手をやめ、道場責任者として組織に復帰し公民館で活動を始めた時、誓ったこと。それも「世界!」だった。それが「世界へ翔たけ!」である。

いよいよ10月、決戦の時がやって来る。連続で大きな舞台が続く。後の舞台は自分にとっても一世一代の晴れ舞台になる。陽孝の優勝のお祝いの宴ではある。しかし、道場生達全員にとっても二度とない大舞台である。大歓喜の出会い!瞬間があるに違いない。

人生には、後の人生を左右するような出会いが必ず何度かある。

来たる優勝祝賀会が道場生の皆さんにとってそうなるものと確信して止まない。35年前、自分が色帯時代に指導した初代桃太郎と千葉奥村道場の桃太郎達との対面が楽しみである。

願わくばこの祝賀会に出席して、これからの空手修行の糧にして貰いたい。親子で夢を叶えた先輩の姿を祝い、その雄姿を脳裏に焼き付け、自身の夢を叶えるための原点にして貰いたい。

世界へ翔たく躍動の力を得る原点の場として貰いたい。