出会いに感謝!絆に感謝!

吉井1

土曜日、幼年部の稽古が終わり事務所でくつろいでいると電話が鳴った。

『吉井です。東京に転勤になりました。今日の昼間、木更津に行った帰りに今千葉にいます。先輩が道場におられたらと思って電話しました。』

30年来の公務員時代の後輩からの電話だった。2月1日付けで東京本社へ転勤となり、昨日福岡から車が届いたので、今日は一日ドライブ。木更津まで足を延ばし温泉に入り、行きは高速を使ったが帰りは下道で、その途中千葉市内から電話をくれたのだった。吉井は大手旅行会社JTBの社員だ。JTBさんには、新極真会の様々な強化合宿や世界大会、海外遠征などで大変お世話になっている。偶然ではあったが、後輩がそのJTBに勤務している事に何か深い因縁を感じた。

吉井と正確には31年前、第4回世界大会の年に知り合った。週1回木曜日に稽古している船橋の行田東小学校の近くに税務大学校東京研修所がある。自分がそこの職員でいる時に吉井が研修生として入校してきた。昔から極真空手の大ファンで雑誌・テレビで自分のことも知っていたらしく、初日に「極真会の奥村さんですか?」と声を掛けられた(笑)。極真空手が縁で知り合ったのである。空手が好きな者同士、職員と研修生との立場の違いはあったが、大きな意味では職場の先輩と後輩である。行田公園で一緒に稽古したり、自分の寮に遊びに来たり、研修所の教育官には内緒で西千葉の居酒屋でお酒を飲んだこともあった。吉井は研修所を卒業して、都内の税務署に配属となったが3年後に辞職した。元々好きだった旅行業の会社JTBに再就職して田舎の九州に帰った。数年後、結婚式に招待された。演武をした(らしい)。佐賀筑後支部に入門。まだ黒帯ではないが、佐賀県大会の司会を務めるなど道場内の信頼は厚い。

3年前の第11回世界大会の時は佐賀筑後支部から日本代表に選ばれた河瀬兄弟の応援に駆け付けてくれた。大会会場でゆっくり話すことが出来なかったことを後悔していただけに、30年来の後輩の突然の道場訪問は最高に嬉しかった。たった4か月だけだったが、税務大学校時代の思い出話に花が咲いた。

自分の今!があるのは間違いなくあの31年前の世界大会の年の一年があるからである。税務大学校は併任発令で3月から6月までのたった4か月しかいなかったが、人生56年の中でも波乱万丈の4か月間だった。そういう時の出会いだった。

先ず、発令直後の日曜日は池袋の総本部道場で弐段の昇段審査に挑戦した。20人組手完遂の後、大山総裁から声を掛けられた。

『奥村、税務署署長になれ!』

緑代表みたいに、“世界チャンピオンになれ!”とは残念ながら言われなかった(笑)。吉井と知り合ったのは4月で、世界大会日本代表選手の最終選抜戦となった5月大阪の第4回全日本W制大会の直前だった。大会翌日の月曜日は全国支部長会議。次の日の火曜日に師範から生涯で最初で最後、職場に電話が来た。もちろん携帯電話などない時代である。

“日本代表決定!”の電話だった。

吉井も自分のことのように喜んでくれた。研修生ではあったが、10月の世界大会も日本武道館まで応援に来てくれた。自分の人生が決まったあの瞬間も、世界の舞台に立った雄姿を吉井は生で知っているのである。ある意味では自分が一番輝いていた時期だったかもしれない。だからこそ、そういう時に出会った後輩の道場訪問が嬉しかった。歩む道は違えど、何か共通項を感じるのであった。6月併任の最終日は研修生達から花束と色紙を頂いた。世界大会に臨む前の激励である。懐かしい思い出ばかりである。

自分は熊本の研修所に行った。もしあの時、そこに極真空手の日本代表選手が職員でいたら・・・、想像しただけで吉井が当時どんな気持ちで自分と接してくれたかがよく分かる。研修所時代で今だ付き合いがあるのは吉井一人だけである。昨年の10月22日に陽孝の優勝祝賀会を千葉市内のホテルで盛大に行った。その祝賀会の乾杯の音頭を取ってくれたのは、世界大会に出場した時の当時の職場の直属の上司だった。まさに世界大会は人生の岐路になった。

17時からの少年部稽古の最中に吉井が道場にやって来た。途中から道場の中に入れて見せてやった。稽古の最後で挨拶をして貰った。子供達とも一緒に写真も撮った。書き終えたばかりの大山総裁の座右銘十二カ条を少年部と唱和し、記念に1枚の座右銘の書をプレゼントした。心から喜んでくれた。

自分も吉井も好きな道を選んで公務員をやめた。二人とも空手が好きだったから出会えた。しかし、お互いその職場にいなかったら出会うことはなかった。奇跡の出会いに感謝の一日となった。

吉井が帰った後、座右銘や極真精神ほど有名ではないが、大山総裁のある言葉を思い出した。

『希望の朝を迎えよ。そして感謝の夕べを迎えよ!』

希望に満ち溢れた朝。夢や理想に燃え、日々を過ごす。その一日一日を大切に生きなければならない。そういう夢や理想に向かって歩む道。その道を、我が道を進めとの教えである。感謝の夕べ。そういう日々を送れることに、そのすべての事に対して感謝しなければとの教えである。そういう道を歩めることに感謝しなければならない。人生を一日に例えた生き方である。

三好副代表の言葉を借りれば、吉井と出会ったあの4か月間は二人にとって朝陽が昇るような日々であった。

出会いに感謝!変わらぬ絆に感謝!

“吉井、今日は訪ねてくれてありがとう。またいつでも遊びに来いよ!”

この道より我を生かす道なし この道を歩く!