出会いは奇跡を起こす!

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いい夢見てたら朝っぱらからけたたましい携帯の呼び出し音が鳴った。時計を見たら、何とまだ5時過ぎ。時間も時間!「誰か・・・?」不吉な予感がしたが外れて良かった(笑)。

陽孝からだった。オーストラリアから帰国したとの連絡だった。

豪州の八尋支部長からの招聘で佐賀筑後支部の河瀬敦志選手と共に遠征し、1週間のハードスケジュールを終えて無事に帰国した。八尋支部長の奥様や元日本代表の村瀬君が送ってくれた写真が物語っていたように、有意義な遠征だったことは弾んだ声で分かった。自分が招待した訳でもないのに、「師範、ありがとうございました。本当にありがとうございました。」と何回も言われた。

こうやって帰国するや否や空港から御礼の電話をするところは、相変わらず律義で陽孝らしいなと思った。金曜日から今度は日本代表強化合宿である。ゆっくり休めよ!と言ったけど、多分今夜も親子で挨拶に来るだろうなと思った(笑)。

当初は木曜日帰国の可能性もあった。強化合宿前日の帰国である。ましてや3月は、合宿の他にも5日間の中国遠征がある。大学の卒業式にも出席しないで自分と上海に行くことが決まっていた。総本部事務局から豪州遠征の話があった時、陽孝にはこう言った。

『合宿や中国遠征もあって大変だけど、行けるんだったら行った方がいいぞ。大会とは違った別の経験が出来るから。』

詳しくは話をしなかったが、実は自分にはこういう思いがあった。

まず第一に、先方は世界チャンピオンの陽孝を求めている。それに応えて欲しいと思った。就職したら、遠征はなお難しい。それに断ったら次はない。

オーストラリアは支部は、WKOの中でも1、2番を争うくらいの親日の国でもある。毎年夏に開催する豪州選手権大会に日本人選手を招待してくれている。選手強化委員として毎年選手選考をしている立場でもあり、無下に断りたくなかったという気持ちも少しあった。弟啓治(師範)や盟友伊師師範の事も脳裏をかすめた。自分は行ったことはないが、豪州には縁があった。

自分が陽孝に一番勧めた理由?それは・・・

 “チャンスを大事にして欲しい!”

と思ったからである。チャンスは自分で掴むものである。しかし、自分の意思や力だけではなく、人を介して廻って来るものでもある。自分の力では及ばないチャンスもあるから。勿論、努力をしている人の所にしか来ない。ましてや空手の世界。勝負、実力の世界である。陽孝は支部長ではない。世界チャンピオンではあるが、一道場生である。だからこそ巡ってきた貴重なチャンスを大事にして欲しいと思ったのである。そして、この海外遠征という又とないチャンスの先には必ず生涯無二の“経験!”が出来るかもしれないと思ったからである。

大山総裁が仰せである

武の道において真の極意は体験にあり よって体験を恐るべからず

もしかしたら一生を左右するような運命の分岐点とも成り得る“出会い!”あるかもしれないと思ったからである。

豪州の八尋支部長は日本人である。豪州代表選手として世界大会にも出場した同じ軽量級の選手でもある。奥様はユースジャパン出身の女子選手である。共通項が多く、必ず陽孝とも合うと思った。豪州には自分が一目置く存在の男がいる。これまでの日本代表選手団の歴史の中でも光輝く存在の男がいる。空手の実績以上に、その生き方に大きな魅力を感じていた。世界大会の時くらいしか会えないが、FBでの投稿のやり取りでも只者ではないと感じていたから。支部長の身ではないが、生涯の空手道を貫き通している姿に尊敬の念さえ感じていた。陽孝の最高の手本になると思った。

村瀬 剛史 参段。元広島支部。第6回世界大会4位入賞。世界大会出場で知り合った豪州代表の女子選手だった奥様と結婚して単身海を渡った強者である。彼の存在なくして選手団コーチの石原 延支部長や後輩にあたる島本兄弟の活躍は有り得なかっただろう。それだけ彼の為した広島支部、日本選手団での功績は計り知れない。世界戦士の大先輩の村戦君との出会いは陽孝にとって大きな大きな財産になるだろうと思ったのである。

滞在中に村瀬君から届いた写真やメールを見てそれは確信に変わった。

『岡崎陽孝選手から、彼の師であり、日本代表監督、そして世界戦士の大先輩でもいらっしゃる奥村幸一師範自らが書いてくださった「魂の書」を授かりました。道場も持たず、組織に何の貢献も出来ていない自分ではありますが、この極真精神を常に心に刻んで人生を精進してまいります。押忍! 』

『世界戦士としてのプライドは常に胸に秘め、極真空手で培った精神で、これからの人生も歩んでまいりたいと思っております。「魂の書」、私の書斎に飾り、武道的考えとは対極に位置するオーストラリア文化の中で、常に心に刻んで生きてまいります。』

『奥村師範 岡崎、河瀬両選手にとって今回の遠征が、良い経験になり、これからの人生に少しでも役だっていってくれればと思います。ふたりとも、本当に礼儀正しく素晴らしい好青年で、そして話もしっかり出来て、世界のトップで活躍する選手はやはり違うなと感心いたしました。このような選手たちがユースからたくさん育ってきている日本選手団は、まだまだ海外をリードしていくべき存在だなと改めて感じました。岡崎、河瀬両選手、これを縁にこれからもずっと応援していきたいと思いますし、ふたりの飛躍を心から願っております。』

自分と空手観が全く同じだなあと思った。そこには、自分が桃太郎達に対して思い描いている生涯の空手道の在り方が綴られていた。そして、日本選手団を思う心。ユースジャパンへの洞察力。凄いと思った。日本にいたら間違いなく支部長になっていたと思う。選手団のコーチに絶対欲しい逸材である。

自分のこれまでの人生を振り返った時、人生の節目節目で色々な選択を迫られることがあった。乗り越えなけれならないような出来事もあった。運命の分岐点ともいうべき出来事も幾つかあった。その時に、必ずあるものが存在した。それは・・・・

 “出会い!”だった。

それは人であり、組織であり、書物であった。

この空手ですら、一テレビドラマの出会いから始まった(笑)。

極真空手との出会い。大山総裁、緑代表との出会い!この二人との出会いがなかったら今の自分はない。その出会すら。もし世界大会日本代表選手になっていなかったら・・・この出会いはなかった。

12年前の第9回世界大会の時に企画された雑誌の特集記事である。

『わが青春の世界大会』

“・・・私の持論として「人間が強くならないと、どんな稽古しても強くならない」というものがあるのです。礼儀作法にしても、人付き合いにしても、人間を強くする方法というのはたくさんあると思うのですが、その一つが「人との交流」だと思います。”

“・・・日本代表に選ばれたことで、私も総裁に名前を憶えていただくことができましたし、交流も広がりました。支部の道場生だった私にとって、あれは原点ですね。・・・”

“・・・日本代表メンバーに選ばれるのと選ばれないのでは、その人の一生を左右するほど違う。人生が変わるから、世界大会には人生すべてをかける価値がある。・・・”

我が組織の3大使命、「青少年育成」「国際交流」「社会貢献」

その中の一つの「国際交流」のチャンスが巡って来て、人生を左右するような出会いがあるかもしれないと思ったから強く勧めたのである。

空港から帰国の電話報告をくれたのに、自宅に着いたらまた律儀にも御礼のメールが来た。村瀬君も八尋支部長の奥様の里伊奈ちゃんも陽孝のことを好青年と言っていた。自分もつくづくそう思う。・・・師範に似て(笑)!

こう返信した。

『写真見ただけで、有意義な遠征だったって分かるよ。断らなくて良かったな。いい男に出会えたな。ゆっくり休んで合宿で大暴れだな。お疲れ様。』

観光地での楽しそうな写真を見た道場生は、海外遠征なんていいなあと誰もが思っているだろう。日の丸を背負って遠征した軽量級の二人が、190cmの世界大会豪州代表選手と真剣勝負の組手をして圧倒し、村瀬君や道場生達を唸らせたことを誰も知らない。昨年の中国遠征もそうだった。

海外行って黒帯締めて立ったら、其処はもう戦場である。

いよいよ日本代表選手団が富士で始動する。

 出会いは奇跡を起こす!