火とは戦いの様(さま)である!

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火とは戦いの様(さま)である。炎となってわが全身全霊を燃え上がらせること。勝負の妙諦はこれに尽きる。火とは、すなわち戦いの本質である。・・・一撃必殺の剣法として恐れられた薩摩示現流において、・・・必殺の気迫とは、水を沸騰させる茶釜ではまだ足りぬ。最後の水一滴も霧散せしめ、自身が真っ赤に灼熱し、触れるものすべてを焼き尽くすほどになってこそ人が斬れる・・・』大山倍達総裁著書:昭和五輪書 火之巻

空手バカ一代に憧れ、その主人公が実在の人と知ってからは兄弟二人で極真病になってしまった。いつの日か入門する日を夢見て、実家近くの闘魂神社で空手の真似事をして過ごした日々。とは言え、世の中甘くない。現実は厳しいものである。弟啓治(師範)は国鉄に就職。自分は公務員試験を受けて熊本へ行った。だから卒業後、一発で上京した訳ではなかった。職場の研修所があった熊本の地が運命を変えた。剣豪宮本武蔵が晩年を過ごし、あまりにも有名な兵法書「五輪書」を書いたのが熊本だった。給料を貰う度に市内の本屋で大山総裁の著書を買い漁った。そして、大山総裁が昭和の宮本武蔵を目指していたことが思いに拍車を掛けた。自然と宮本武蔵に興味が沸いた。そして、吉川英治先生の著書「宮本武蔵」を読んで上京を本気で決意した。「宮本武蔵」のあの一説が極真入門のための上京を決意させた。宮本武蔵が幽閉させられた城から出て、剣の道に生きる決意をするシーンである。

『・・・孤剣!たのむはただこの一腰。武蔵は手をやった。これに生きよう!これを魂と見て、常に磨き、どこまで自分を人間として高められるかやってみよう!沢庵は、禅で行っている。自分は、剣を道とし、彼の上にまで越えねばならぬ。と、そう思った。青春、二十一、遅くはない。』宮本武蔵 地之巻編

大袈裟に拳の道に生きようとまでは思ってはいなかったが、仕事は仕事、それはそれとして、ただ仕事だけして終わる人生が嫌だった。男として生まれたからには、ただ純粋に強くなりたかった。たった一度の人生!小さい頃から憧れだった空手をやってみたかった。もし女に生まれていたら多分ダンス習って宝塚!を目指していたかも(笑)。だから自分にとっては大山総裁は勿論であるが、宮本武蔵、その中でも五輪書は特別なものだったのである。大山総裁の数ある著書の中で何が一番好きか?と訊かれたら、間違いなく「昭和五輪書」と答える。現役時代は地之巻しか持っていなかったが、支部長になってから天から残りの四巻(水之巻・火之巻・空之巻・風之巻)を授かった。この「五輪書」がらみで、現役時代に忘れられない思い出がある。 それは第3回世界大会の会場だった。その前年に夢にまで見た全日本大会初出場を果たし、初めて観戦する極真最高峰の世界大会だった。ある黒帯の先輩が、“大変だ!大変だ!”と道場生が集まる所にやって来て言った。 「奥村が本に出てるぞー!大山総裁の写真集に!」 一同騒然となった(笑)。この世界大会の年に大山総裁は60歳となった。宮本武蔵が五輪書を書き始めたのが齢60の年だった。宮本武蔵が五輪書を書いた同じ年に、その記念に刊行発売された写真集だったのである。その意義深い記念の写真集にな、な、何と!に自分が載っていたのである(驚)。誰かがその本を買って来た。 大山倍達 写真集 空手 極限の世界

宮本武蔵の「五輪書」になぞらえて、大山総裁の修業時代から世界大会や全日本大会など極真空手の歴史を綴る「地・水・火・空・風」の五部構成から成る写真集だった。その中の火之巻では、第3回世界大会の日本代表選手の選抜戦として前年に開催された第15回全日本大会の写真が収められていた。その火之巻のなんと1ページ目に見開きで自分の試合が載っていたのである。だから皆が驚く訳である。初出場の大会で、しかもその1回戦の試合だったので自分でも驚かずにはいられなかった。さっそく写真集を買った。記念にと二冊買った。日本語版と英字板の。本当はよく覚えていないが、事務所の本棚に二冊あるので多分そうなんだろう(笑)!

コロナ禍で道場休館中に「昭和五輪書 地之巻」を久し振りに読み返した。若い頃に読んだ時とは、違った感じがしてならなかった。平時ではない状況、58歳にして、今だから響くことばかりだった。経験が大きいのだろうと思う。続いて数年前に天から授かった「水之巻」を読み上げ、先週あたりから第3巻の「火之巻」を読みだした。この火之巻を読みながら、三十数年前に世界大会の会場で買った件の写真集を思い出したという次第である。また地之巻、水之巻を読んだ時はあまり気にも留まらなかったが、この火之巻を手にした時、本のサブタイトルに思わず目が留まった。即ち、 昭和五輪書 火之巻「不動不屈の覇気とは何か」

不動心の不動である。不屈の精神の不屈である。そして、覇気!もう読む前から心が躍った。

『・・・覇気とは何であるのか。本来、覇気とは「王道」に対する「覇道」から出たことばである。つまり、人徳をもとにする政道を王道といい、覇道とはこれに対して、武力・権謀を用いて国を治めることを指す。覇者とは、力をもって天下を制した者であり、覇気とはこの覇者たらんとする激しい野心を意味する。・・・』昭和五輪書 火之巻

つい最近の桃太郎クラスの話である。あまりに少年部達が気合いが入っていないので“覇気がない!”と言ったばかりだったから尚のこと驚いた。もう朝練に出さない!と。“覇気!”の字と意味を調べて来るように宿題を出した。内心で宿題をして来たら、富津の少年部と一緒に朝練出そうかなと後から思った。しかし、誰も宿題を持って来なかった(内緒)。中には調べたが土曜日の稽古の時、宿題を持って来るのを忘れたらしい。持って来なければした事にはならない。まあ奥村師範の指導だからこんなもんだろうと思った。自分は学校の先生ではないので宿題やってきたかとは聞かなかった。同じ日、一般部稽古の時。毎日来る黒帯と茶帯にも宿題を出した。今、暮れの昇段審査に向けて受審者が型や移動の稽古を必死でやっている。太極の型と平安の型のそれぞれの(演武)時間を型DVDで調べて来るように言った。ふたりとも宿題をして来なかった。正直言うと、宿題やって来ない事よりも師範の言い付けを行わない事に驚いた。自分にも道場生時代があっただけに考えられなかった。押忍が、おす!かオッス!の押忍だった。昔の奥村師範と戦う前にもう負けていた。やっぱりこの時も自分の方からは宿題してきたか?とは聞かなかった。調べて自分に報告するのを忘れたのならそれでいい。昇段目指して頑張る先輩とこの同じ機会に学んでもらえればとの思いだったが。自分が型のタイムを知りたかったのではないから。そんな事はもう10年前にしている。ドリームカップで型競技が始まった時に、とっくの昔に確認している(内緒)。

著書のサブタイトルではないが、世界大会日本代表選手などにプロレスのリングネームみたいなマスコミが付けた選手のキャッチフレーズみたいなものが あった。三好副代表は大和魂の男。木元師範は静かなる闘将。外舘師範は北の武人。他には城西の爆撃機。格闘マシーン。城南のハリケーン。皆かっこ良かった!大和魂の男、最高である。奥村師範は、“極真根性男!”根性の男・・・最悪だった。嫌で嫌でしようがなかった(内緒)。一時期は千葉の猛牛二世と呼ばれていた。全日本入賞の白石先輩の後輩だったので。先輩には失礼だが牛も嫌だった(極秘笑)。塚本は極真の革命児。ヴァレリーは神童。かっこ良過ぎる。自分は根性と牛(悲)。でもあの組手スタイルと顔じゃあしようがなかった(納得)。

大山総裁は仰せである。

『努力や根性という言葉を古めかしい言葉と思ってはいけません。努力と根性なしに君達の大きな夢を叶えることはできません。お父さんとお母さんがいて君達が生まれたのです。両親の存在があって君達の存在があるように、弛まない努力と何ものにも屈しない根性があって夢が叶うのです。』空手バカ一代記CDから

偶然にも30数年前の宮本武蔵の五輪書になぞらえて刊行された写真集に自分の戦いが掲載された。火とは戦いの様(さま)である。その火之巻の巻頭に。今振り返って、光栄なことであるとしみじみ感じる。初めて世界大会を観戦し、自分も世界の舞台に立ちたいと思った。本気で思った。それこそ火の玉となって猛稽古して夢を掴んだ。自分の戦いの様(さま)を誰かが、極真根性男と名付けた。今は、素直に光栄なことと思っている。根性の男!大いに結構である。はっきり言おう。根性がなかったら夢は叶わない。努力しなかったら夢は叶わない。覇気のない稽古では強くならない。他人(ひと)から言われて気合いを入れているようでは強くならない。気迫!裂迫の気合い!世界大会前の記者会見の席でひと言づつ挨拶があった。自分はこう言った。

“世界一の気合いで頑張ります!”

道場に来た時の挨拶。不動立ち。返事。これが覇気の始まりである。また、こうも思う。気合いとは、情熱!の異名なり!だから選手団監督の命が下った。

本当は誰にでも分かっていることである。難しい事ではない。それが出来るか出来ないか!本気でやるかどうか!現役時代、もう昔の事だからよく覚えていないが、不動立ちを注意されたことなど一度もなかった。先輩に、気合い入れろと注意されたこともない。毎日が試練のようなものだった。いつ決闘になるか分からなかった。

不動立ち!一回教えて貰ったら、先輩の姿を一回見たら出来なくては・・・年齢、帯の色なんて全く関係ない。目の前に誰がいるか?・・・要はそういう事である。

再来年1月には自分も同じ齢、還暦となる。何故だか大山総裁の言葉がビンビン入ってくるから不思議である。著書を読めば読むほど響いて来るのである。以前はこんな事はなかった。いよいよ天に昇る時が近づいてきたかな(笑)。ここをクリック☞『空手 極限の世界』解説